コニスポ!

Masahito Konishi [tailor]

BESPOKE TAILOR DMG,Made to
Birthday : 1969/7/29
Hometown : Osaka Japan

2009/12/12

ビキューナは気まぐれ

私共でもお客様の持ち込み生地による様々なオーダーメイドをお受けしておりまして、スーツは通年持ち込みでご注文があります。
特に秋頃からは持ち込みのカシミアでコートをお仕立てするケースも多くなってきます。

特にレディースの生地の在庫は少ないので、最近は好きな生地を購入されて来店される女性のお客様も増えてきており、ワンピースやコートなど幅広くお仕立てしております。


また今年の冬はたまたまかもしれませんが、ビキューナ生地を持ち込みで、ラグジュアリーなコートをオーダーされるお客様のご依頼が相次いでおりました。

お客様の中にはビキューナ生地をプレゼントで貰ったという羨ましすぎるスペシャルな場合や、生地を購入してきたという方なども居られて、確かに円高の影響で海外のルートで購入すると日本よりは安いらしいです。

といっても日本円で着分数十万円は軽く超えているでしょうから安い買い物かどうかは個人差があるでしょう。

とにかく世界一高価な生地には間違いありません。。


勿論私共でもビキューナの生地を常に所有しておりますので、その品質や扱いなどを毎年研究しております。


0912vicuna


ビキューナの特徴は、やはり素晴らしすぎる位に柔らかい高級生地であること。
またその類い稀な稀少価値と生地のデリケートさ故の縫製の難しさなど、そのありとあらゆる部分で限界点がつきまとう意味においても、仕立て屋道を語るに避けては通れない部分があります。。

そして個人的な意見で恐縮では御座いますが、私はビキューナという動物自体がなんだか興味深くて子供の頃から母に教えられて大好きでした。
赤道直下の4000M以上の地域にごく僅かに生息するミステリアスな感じがまず興味をひきます。その上可愛くて愛くるしくて、何だか我が儘そうで大変気になります。あと話は逸れますがアンデスと言えばコンドルなんかも子供の頃から大好きでした。

またビキューナを神の化身と崇めながら、儀式としてその原毛を大切に刈りとるアンデスの人々の考え方や生活習慣にも何か惹き付けられるものがありました。確か吹田の国立民俗学博物館でその映像を見た記憶があります。

ビキューナについての説明は、以前私自身が書いた読売新聞のコラムブログでも何度か書いてきましたので、その部分は省きます。宜しければチェックして下さい。


ところでビキューナに近い品種の動物に、同じアンデス山脈の中腹2500M位の付近に生息するグアナコという動物が居ます。

このグアナコの原毛も細くて柔らかいので、カシミアよりはずっと高価で稀少なモノなのですが、やはり原毛の細さや柔らかさ、そして価格についてもビキューナ程ではありません。。

グアナコはビキューナの2倍位の大きさがあり、オスがメスを取り合う時には、命がけで闘うようなどう猛な動物で、ビキューナはそういった争いを避けて高地の僻地に逃れたグアナコが進化した品種とされる説が有力らしいです。

そうして高地に移動した現在のビキューナは4000M位に常に生息し、グアナコよりも大人しくなり小型化して、更に毛が細くて柔らかい動物に進化したようです。

ある意味有難い話というか、凄く奇跡的なことだと思います。

とすると人間に例えると社会的にノケモノだったオタクや引きこもり君の唯一の楽しみの文化が発展し秋葉原文化が出来たような感じでしょうか?

進化と発展とは、少し違うかもしれないけど、単にマイナスと思われたことから計算出来なかったプラスに転じた部分では近いかもしれません。。

登校拒否の負け犬グアナコが高地へ逃げて進化しビキューナになり、その高地でへそまがりな生活するビキューナ君が居たから、世界一細くて柔らかい繊維が出来たと言えるような気がします。。


元々ビキューナは多分気まぐれもののグアナコDNAがあるんじゃないかなって…多分B型?だとしたら面白い。

追伸
人間でもへそまがり、気まぐれな人って何か興味深いような気がします。お洒落の真髄も案外そんなとこにあるような気もします。

あと気まぐれでビキューナの生息する地域に行って、生でビキューナを見てみたいという夢があるんですが、アンデスの高地は気まぐれで行けるような場所じゃないですね~大抵の人は高山病にかかるらしいですし、体力的にもかなりきたえないと…ですね、また多分ビキューナのコートを作る以上にお金もかかるんでしょうね!!

まだまだ働け~という神のお言葉が聞こえてきそうです。