頑張り人『巻誠一郎』
百聞は一見に如かず。
日本に戻って早々、絶対に行くと決めていた熊本に行ってきました。
このブログでも書きましたが、同じ歳で熊本の地で復興の中心で頑張るロアッソ熊本所属の巻誠一郎(マキ)と連絡を取りまして。
ドイツにいるボクには、熊本の情報はネットニュースが中心。
学校が再開され、自衛隊の復旧作業も終了など、もうすっかり復興しているような内容のニュースが多かったので、すっかり安定しているのかと思っている部分もありましたが。
実際は全然違いました。
正確に言うと、被害にこんなにも差があるのか、ということ。
市内の方は被害もありながら、かなり機能するようになっていましたが。
最も被害が大きかった地域の方々は、至るところの建物に赤紙(全壊)や黄紙(半壊)が貼られていました。
とにかく実際に見ないとこれは伝えられない状況。
車を降りて、ゆっくりと見て回りましたが、自分の家がお店がこんなになってしまった方々の心情は、もはや想像しても想像し切れません。
マキはいろいろなところを回りながら、一つ一つ状況を説明してくれました。
本人もFBやメディアを通じて積極的に情報発信していますが、ボクも微力ながら伝える役目を担わなくてはと痛感。
そのあとは、マキの日常になっている避難所回りに帯同させてもらいましたが。
総合体育館の前のアスファルトがボコボコです。
ついたてで仕切ったスペースで生活する人たちや、仕切りはなくダンボールの上に布団を敷いて寝ている方々もいて。
ここで改めて、巻誠一郎という漢の偉大さを感じました。
避難所に着くと、躊躇することなくぐいぐい中に入っていく。
そこでは分け隔たりなく、どんな人にも声を掛け、話をし、写真を撮り、サインに応じていきます。
「ここら辺はもう何度も何度も来てるから、みんな覚えてくれてるんだ」
という、地元のスーパースターの姿は、本当に被災地の方々のパワーになっていました。
そういうマキは、これから避難所にいる人たちが熱中症になることを懸念して、塩飴をボックスに入れて準備してて。
そのボックスを1つ1つ避難所の方々にプレゼントしていくんです。
「おじちゃん、おばちゃん、塩飴食べて。熱中症になったらいけないからね」
そうやって声を掛けると、疲れ切って休んでいる方々の表情がパーっと明るくなっていくんです。
避難所にはボランティアの方々もいっぱいいますが、とにかく自分でどんどん回って手渡ししていくんです。
それを見てて思いました。
というか、誰もが思うと思います。
こんなこと出来るのは、これだけ有名な巻誠一郎だからなんだろうなって。
そしたらマキはこう言うんです。
「確かにオレのこと知ってくれている人もいるけど、おじいちゃんやおばあちゃんは全然知らない人もたくさんいたよ。こうやって声掛けて回ることで知ってくれた人がたくさんいたよ」
って。
全然関係ないんですよね、彼にとって自分が有名かどうかなんて。
とにかくみんなを励ましたい一心なんですよ。
たまたま来ていたピエロ一団と絡んで、被災者の皆さんを笑顔にしたり。
そんな話を聞いて、ボクも積極的に飴配りを手伝わせてもらいました。
「みんなやることもないし、喋ることも少なくなってきてるから、とにかく声掛けて喋ってあげて」
というマキの話を聞き、いろいろ話しかけていくと、皆さんいろいろな話をしてくれるんですよ。
そして皆さん被災者なのに、「遠くまで来てくれてありがとう」って言ってくださる。
それだけでもドイツから来た意味があるなって思いましたが、なんだかこちらも元気をもらうことになっちゃいました。
自分のサッカーの練習もあるのに、それをずっと続けてきてるんです。
2日目のことですが、2部練習の合間に避難所に行き、練習のあとには子供たちのスクールで一緒にボールを蹴るという。
そんなマキの1日をしっかり見たくて、練習にも行ってきましたが、もちろんサッカーの練習だって全力です。
これに加えて、再開したJリーグのために、週末には試合に行くのですから。
まさに鉄人です。
こんなハードな生活をずっと続けているなんて。
ボクも彼とは比べられないですが、サッカー選手として生きてきた経験があります。
でもね、2部練習がある日に、プラスアルファーであんなに行動することなんて不可能でしたから。
それだけ彼のやっておることは異常なことです。
それでも地元を思う強い気持ちが、彼の行動のすべてなんでしょう。
「これくらい全然大丈夫。さあ小学校に飛び込みで行って子供たちとサッカーしに行こうぜ」
そう言ってこの日は3つの小学校に飛び込みで行きまして。
そのうち2箇所で子供たちと一緒にサッカーすることが出来ました。
ただただ、子供たちが笑顔になり、喜んでくれる、これだけでもまた来て良かったなって。
みんなでパシャり!
ちなみに大きな被害があった地域にある山西小学校で物凄い奇跡が起きました。
ボクはフォルトゥナのトレーニングウェアを来て回っていたのですが、突然、
「フォルトゥナ・デュッセルドルフ!?の、瀬田さん!?!?」
って。
一瞬どうしてボクのことを知っている人がいるのだろうと混乱しましたが。
なんとそれは2年前までデュッセルドルフ日本人学校に赴任されていた菅先生だったんです。
「なんでこんなところにいるんですか?!信じられない!!」
とお互いにびっくりでしたが、これもまた、行動したからこそ、熊本に来たからこその奇跡です。
ドイツから誰だか分からないボクが行って、何かになるのかな、という小さな不安はありましたが、ここでも大きな大きな意味が生まれました。
早速他の先生方にもそんな奇跡が伝わり、最後には感謝状までいただいちゃいました。
ボクもお返しに、今回熊本に行くために特別に作ったフォルトゥナ熊本応援ユニフォームをプレゼント。
帰国前に急いで作製して、事情を説明して選手らからもサインをもらってきたもの。
マフラーもプレゼントしてきました。
ボクは合計で2日間でしたが、マキはこれを震災後からずーっと続けています。
途方もないことの繰り返しですが、マキは続けていくんだと。
そんな感じで2日間、マキの熊本支援活動に帯同してきましたが。
まだまだ伝えきれないことがあるので、これはブログに続編を書きますね。
まずはVol.1ということで。
「頑張るときはいつも今」