ドイツ・スポーツフリーランサー GENGO SETA OFFICIAL BLOG 頑張るときはいつも今

GENGO SETA [SPORTS FREELANCER in Germany]

Fortuna Düsseldorf
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07/09/2014

ときは熟しました。

W杯の準決勝、ブラジルvsドイツは衝撃的な結末となりました。

誰もが接戦を予想したと思いますが、結果は7-1というスコア。

この数字だけ見れば、勘違いしてしまうかもしれませんが、正直言ってこの2チームの差は紙一重だったと思います。

オレは戦術家でも分析家でもないので、大それたことを書くのはどうかと思うのですが。


でもこの結果を生んだ要因は必ずあります。

最大のポイントは、ドイツがレーブ監督を信じてきたことだと思います。

2004年にクリンスマン監督のアシスタントコーチとして代表スタッフ入りし、そこからチームの戦術を任されるようになってから、2006年には監督に就任、そして今年で10年です。

その間にドイツサッカー協会主導で育成改革を進めてきて、結果が出るのをじっくり待ってきたことが、最大のポイントだったと思います。

レーブ監督は2006年にはドイツW杯を3位で、2010年南アフリカW杯も3位で終えています。

つまり、2連続でベスト4で敗れた経験を持っているのです。

特に2006年は自国開催、国民からの想像を絶する期待とプレッシャーを感じながら戦い、延長の末、イタリアに敗れました。

もちろんそのときはコーチとしてですが、そのときの異常な重圧を経験したことがあるからこそ、今回のブラジル代表選手たちが直面していた状況をよく理解出来る、と試合後のインタビューで答えていました。

それは、当事者になったからこそ、それを経験したからこそのものです。


つまり、彼は先制点がどれだけ大事かを知っていたのです。

そんなのどの試合だってそうさ、と思うかもしれませんが。

自国開催で準決勝、最大の敵ドイツを前に、キャプテンのチアゴ・シウバと、エースのネイマールを欠く状況。


ドイツの先制点は、そんなブラジル代表選手を焦らせる要素として、十分すぎるものでした。

だから浮き足立ったブラジルを相手に、ドイツは一気に畳み掛けました。

一瞬隙を見せた敵にとどめを刺すべく、全力でギアをトップに上げていました。


レーブ監督はもちろん、その瞬間が勝負の分かれ目だと分かっていたと思います。

そしてに加え、シュバインシュタイガー、ラーム、クローゼの3人がピッチにいたのは大きかったはずです。

それはこの3選手も、2006年の想像を絶する重圧を、ドイツ代表の一員として経験していたのですから。


それに加えて、クロース、エジル、ケディラといった世界トップクラスの選手たちは、ブラジルにとどめを刺すに十分なクオリティを持っていました。

もし彼らがそのクオリティを持っていなかったら、ブラジルはこの猛攻を凌ぎきり、冷静さを取り戻して、反撃に出れたかもしれません。

しかし、ドイツの選手たちはそれも分かっていたからこそ、全力で仕留めに掛かったのだと思います。

混乱に陥ったブラジルにとって、ディフェンス面を落ち着かせられるチアゴ・シウバがいなかったのは大きかったでしょう。

また、取られても取り返してくれる、と無条件で希望を持たせてくれるネイマールがいなかったのも、ブラジルの絶望を生んだかもしれません。


彼ら2人がいないことが、6点差を生むほどの差ではなかったはずです。

ただ、彼ら2人がこの6点差を阻む存在であった可能性は、十分あると思います。

あとは、ドイツ人の生真面目な性格が、最後まで手を抜かなかったこと。

相手が王者であろうと、新興勢力だろうと、対戦国を尊重するからこそ、90分間全力で戦い抜いたのです。

試合は前半の5-0で終わっていました。

逆に気の抜けた後半に2、3点返されてしまう展開もありえたかもしれません。

だからドイツは気を抜かなかったのです。


そしてレーブ監督も選手たちも分かっていたはずです。

これがフィナーレではない、ということを。

自分たちは4大会連続でベスト4に進出しながら、後一歩が足らず、優勝を逃してしまっているのだということを。


4大会連続ベスト4に進出しているということは、ドイツはこの4大会すべてで、予選グループ3試合と決勝トーナメント4試合の計7試合を戦ってきた経験があります。

この4大会すべてに出場しているのはクローゼだけですが、レーブ監督やシュバインシュタイガーら3選手も、3大会を経験しています。

つまり、4年に一度の世界の祭典が、どれだけの重圧との戦いであり、またどれだけ長丁場で、どのようなマネージメントをしていく必要があるのかも、彼らは経験から学んできていたのです。


百聞は一見にしかず。


クローゼの4大会連続というのも凄いですが(実際、通算16得点でトップに立った)、レーブ監督がこのチームを率いているということが、今回の大事なポイントでしょう。

そしてその監督を信じ続け、また抜本的な育成改革を行い、優れたドイツ人選手の育成を続けてきたドイツサッカー協会の勝利と言えるかもしれません。


ときは熟しました。

いよいよ、ドイツが世界の頂点に立つときです。

1954年、1974年、1990年と3回の優勝経験がありますが、それはすべて西ドイツ時代のもの。

ドイツ統合を果たしてから24年、ついにそのときまであと1つです。

日曜日、2014年ブラジルW杯の決勝。

そのあとのブログで、また喜びの報告が出来たらいいな。


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