自主性の文化。
ドイツでの生活が14年を超えて、最近改めて感じたことがあります。
それは自分が親になって気づいたというか、初めて知ることになったということなのですが。
日本の教育が講義形式(先生が前に立って授業をする形式)が中心であるのに対し、ドイツはディスカッションやディベートが多いことは結構知られています。
特にこの違いは戦後の教育方針に対しての違いだったようですが。
どちらも一長一短であり、どちらが優れているということではないですが、一方で人前で自分の考えを発現したり主張したりが苦手な日本人が多いのは事実であり、それはこの教育の形が少なからず影響しているとは思います。
確かにドイツに来てからも、とにかくドイツ人だけでなく、外国人の自己主張の強さには驚かされました。
間違えていても自分の考えは主張するし、自分の考えが正しい場合は相手を納得させるまでしっかりディスカッションします。
ボクも長くこの国で戦ってきたので、すっかりそういった気質になっていますが、最初はなかなかできませんでした(言葉がしゃべれないというのも大きかったですが)。
また、こちらで子供のコーチをしていたころ、ドイツ人の子供が10歳くらいでも非常にしっかりと自分の意見を言えたり、大人に対して発言できているのを見ていて、こういうところから差が生まれているのだなぁとは思っていました。
でもね、その差はもっと早い段階から始まっていたんです。
ボクの娘も1歳半になり、幼稚園(ドイツでは早い段階からいろいろな形で幼稚園に行けます)を探していたのですが、先日ようやくその候補が見つかりまして。
早速説明を受けるために幼稚園に行き、いろいろな話を聞いたのですが、なるほど、と。
その幼稚園は4クラスあり、1クラス20人ほど。
そして1つのクラスには2歳から5歳がランダムに含まれているんだそう。
え、じゃあカリキュラムはどうなるの?って思いますよね。
それが、極端な言い方をすると、ないんだそう。
もちろんみんなで音楽をやったり、絵を描いたりという時間はあるそうですが、それはあくまでもふんわりとした枠組みであって、気が乗らなければやらなくていいし、好きなことをやりに行っていいんだそう。
園内のいろいろなところにコーナーが作られており、絵本がたくさん置いてあったり、おもちゃが置いてあったり。
さらには図工室があったり実験室があったり、お昼寝ルームがあったりと、とにかく多種多様。
で、子供が自分の判断で好きなところで好きに過ごしていいんだそう。
もはや日本人として幼稚園を経験してきたボクには想像もできないのですが。
それはドイツの教育の中で、自主性を非常に重要視しているからなんだそう。
子供には一切強制はせず、とにかく自主性を重んじるんだそうです。
そうはいっても、一応先生が話をするときは静かにするとか、お腹がすいても食事の時間までは我慢するとか、そういった教育はしてくれるんだって。
食事のときもスプーンやフォークの使い方は教えるし、トイレも教えますって。
年齢がバラバラでも、小さい子は大きい子について行っていろいろなことを学ぶし、大きい子は小さい子の面倒を見ることでまた成長するんだそうです。
まさかこんな早い段階で、すでに自己主張の文化がスタートしているとは。
どおりでドイツ人の子どもは、良い意味で言えば自己主張が強く、悪い意味で言えば協調性がなく自分勝手なんだなぁ(苦笑)
日本では幼稚園でもきちんとカリキュラムが組まれ、時間ごとにいろいろなことを、学年ごとにやっていくものだと思います(もしかしたら少しは変わってきているかもしれませんが)。
その中で食事の前には手を合わせていただきますをして、食べ終わってもご馳走様になるまでは席を立たないとか、あった気がします。
とにかく礼儀とか道徳とかの基本を習いながら、社会性も身に着けていくのが幼稚園のように思っていましたが、ドイツではまず自主性を養いつつ、いろいろなことを自分で体験・発見しながら覚えていくというものなようです。
ドイツのローカルの幼稚園や小学校に通っていた日本人の子供が、日本に帰国後、日本のスタイルに馴染めなかったなんて話も聞いたことがありますが、まさにこういうことが原因なのですね。
まあとにかく、どちらが良くてどちらが悪いということではないと思います。
むしろ、ボクは子供の自主性を尊重してくれて、のびのびとやらせてくれるドイツの幼稚園には魅力を感じていたりします。
礼儀やしつけ的な部分は、親が家庭でしっかりとやればいいことだと思いますしね。
それにしてもこれが、日本とドイツの規律の差にも繋がるんだろうなぁ。
こんなことを、親になってみて気づいた15年目です。
まだまだ知らないことばかり、日々勉強ですね。
というわけで、忙しい時期がやってきますので、風邪をひかないよう気を付けて、また新しい週も気合入れていきます。
「頑張るときはいつも今」